整形外科クリニック 事務・総務業務 アプリ化設計書

対象:事務・総務の業務管理Excel 2ファイル(合計135シート) | 拠点:2拠点 | 作成日:2026-06-11

本書は、Excelで運用されている事務・総務業務を整理し、「難易度 × 効果」で優先度を再評価したうえで、アプリ化・簡易化の対象と設計方針をまとめたものです。

目次

  1. 背景と現状の課題
  2. 難易度 × 効果マトリクス
  3. 優先度ランキング(一覧)
  4. 主要アプリの設計
  5. 業務そのものの自動化・省力化(システムを作らずに減らす)
  6. データ分割・移行方針
  7. セキュリティ上の重要対応
  8. 推奨プラットフォームと進め方
  9. 付録:業務内容のタイプ別内訳と割合
  10. 付録:電話問い合わせ記録の分析(タイプ分け)

1. 背景と現状の課題

2ファイル・合計135シートを確認した結果、Excelを「何でもデータベース」として使っているため、以下の構造的な問題が生じています。


2. 難易度 × 効果マトリクス

各業務を「導入の効果(業務削減・ミス防止)」と「構築の難易度(データの整い具合・複雑さ・移行量)」で4象限に整理しました。右上→左上→左下→右下 の順で着手するのが基本方針です。

効果

A. 最優先(すぐやる)P1

  • 予約変更・休診対応の管理
  • 発注・在庫管理(最低在庫アラート)
  • インシデント/指摘記録
  • 書類作成ナレッジ(参照DB)

B. 計画的に投資(中核)P2

  • 業務タスク管理(日次/定期/申し送り/個人別を統合)★中核
  • 手術・術前タスク管理

C. すきま改善P3

  • 院内マスタ参照(内線/端末/接続情報/重要事項)のWiki化
  • 落とし物・未返却/鍵貸出 台帳

D. 将来検討P4

  • スタッフ教育・力量評価
  • レセプト査定・算定漏れ管理
難易度 →
セキュリティ対応(認証情報の分離) はアプリ化案とは別枠ですが、効果大・難易度低で全アプリの前提となるため、P1と同時に着手することを推奨します(第7章)。

3. 優先度ランキング(一覧)

効果・難易度を★3段階で評価し、着手順に並べました。

順位 アプリ/対応 優先度 効果 難易度 主な統合元シート
認証情報の分離(専用ツール移行) セキュリティ ★★★ ★★ 認証情報シート(複数)
1 予約変更・休診対応 管理 P1 ★★★ ★★ 予約変更/予約管理/○月以降予約・外来
2 発注・在庫管理 P1 ★★ ★★ 発注/在庫マスタ/倉庫・カルテ棚
3 インシデント/指摘 記録 P1 ★★ ★★ 失敗チェックリスト/指摘リスト
4 書類作成ナレッジ(参照DB) P1 ★★ ★★ 書類メモ/共済対応
5 業務タスク管理(中核・統合本命) P2 ★★★ ★★ 業務リスト系8種/申し送り/曜日別/個人別 約15枚
6 手術・術前タスク管理 P2 ★★★ ★★ 手術予定/術前コンサル/麻酔依頼/術前患者メモ/PCR/送迎手配
7 院内マスタ参照(Wiki) P3 ★★ ★★ 内線/端末一覧/接続情報/重要事項/動画マニュアル
8 落とし物・鍵貸出 台帳 P3 ★★ ★★ 忘れ物・未返却/鍵の貸出
9 スタッフ教育・力量評価 P4 ★★ ★★ スキルチェック表(スタッフ別・各約1,000行)/目標
10 レセプト査定・算定漏れ管理 P4 ★★ ★★★ 査定メモ/算定集計/提出用

4. 主要アプリの設計

P1〜P2の各アプリについて、データ項目・機能・期待効果を示します。列名は現Excelの見出しをそのまま活かしています。

P2 5. 業務タスク管理(中核)

最も効果が大きく、最も多くのシートを置き換える本命です。「日次/定期業務」「申し送り」「曜日別チェック」「個人別タスク」を1つのタスクテーブル+絞り込みに統合します。

データ項目説明
記入日 / 期限登録日と締切。期限超過は自動ハイライト
区分本日のお知らせ/連絡事項/定期業務/個人タスク
繰り返しなし/毎日/曜日指定(月〜金)/毎月 = 曜日別シートを代替
拠点拠点A/拠点B/両方
担当者複数選択可。これにより個人別 約15シートを廃止
内容 / 進捗・報告本文と対応履歴(追記式)
優先度★★★本日中/★★早めに/★今週中(既存記号を踏襲)
状態未/対応中/完了。確認者(管理担当/事務長)の既読チェック

主な機能:担当者・拠点・状態・期限でフィルタ/繰り返しタスクの自動生成/完了の一括チェック/過去ログは自動アーカイブ(肥大化防止)。

P1 1. 予約変更・休診対応 管理

データ項目説明
入力日 / 予約日 / 曜日変更対象の予約情報
担当医対象の医師
変更種別休診/枠閉鎖/枠開放/時間変更/振替
対象患者・連絡状況患者ID、連絡済/不在/再連絡 のステータス
Web予約反映脊椎/その他 予約画面への反映チェック
進捗 / 完了対応履歴と完了フラグ

期待効果:「誰に連絡済みか/未対応か」が一目で分かり、患者への連絡漏れ・二重連絡を防止。

P1 2. 発注・在庫管理

データ項目説明
品名 / 発注先 / 届け場所発注台帳。在庫マスタと連携
最低在庫数 / 1回の発注数マスタ項目。下回ると自動アラート
記入日 / 発注日 / 受取日発注〜受取のステータス管理
発注者担当者

期待効果:在庫切れ前の自動通知で欠品防止。レセ時期など消耗の激しい品の補充忘れを回避。

P1 3. インシデント/指摘 記録

データ項目説明
日付 / 指摘者発生日と報告元(部署・患者 等)
内容 / 予想される問題点事象と想定リスク
今後の対策・原因再発防止策
確認チェック担当者各人の確認状況(既存の☑運用を踏襲)

期待効果:入力をフォーム化し、未確認者へリマインド。月次の傾向集計も可能。

P1 4. 書類作成ナレッジ(参照DB)

データ項目説明
書類種別傷病手当金/診断書/共済 など
処理担当 / 支払区分 / 金額誰が・保険/自費・料金
算定方法 / 患者確認事項レセ入力略称、確認すべき期間など
書類URL / 注意事項テンプレートのリンクと注意点

期待効果:書類種別から手順・料金・注意点を即検索。新人でも独力で対応でき、属人化を解消。

P2 6. 手術・術前タスク管理

手術予定の患者ごとに、術前にやるべき項目(コンサル・麻酔科・PCR・送迎手配・IC)をチェックリスト化します。現状は複数シートに分散しており、患者単位で進捗が追えていません。

データ項目説明
患者ID / 手術日 / 担当医手術予定の基本情報
術前タスク術前検査案内/術前コンサル/麻酔科外来/IC/PCR/入院時送迎手配 をチェック項目化
各タスクの状況依頼中/済/キャンセル と期日
担当 / 完了担当者と全体完了

期待効果:患者単位で「術前に何が残っているか」が一覧化され、抜け落ちを防止。


5. 業務そのものの自動化・省力化(システムを作らずに減らす)

第2〜4章は「情報を整理して管理するアプリ」でしたが、本章は視点を変え、作業そのものを機械に任せる/なくすことに絞ります。日次業務リスト・予約変更・書類メモ・失敗チェック・発注の各シートを読み込み、人がやらなくてよい定型作業を抽出しました。多くは大きなシステムを新設せず、今あるツール(予約システム/SMS送信ツール/スプレッドシート)の使い方を変えるだけで削減できます。

現場の1日(日次業務リストより):朝=開院準備(当日の外来予約表を予約システムから印刷して看護師へ渡す/レジ準備)。日中=検査データの取込みとスプレッドシートでの照合/FAX・メール確認/弁当の手配/初診予約フォームの確認と患者への折り返し電話/リハ患者へのリマインドSMS送信/郵便回収。夕方=当日分の会計確定/備品補充/手術表の更新→印刷→各所への差し替え/電子カルテのバックアップ。

自動化・省力化の候補(効果順)

No 業務(現状の手作業) 自動化・簡易化の方法 効果 難易度
1 予約変更の患者連絡
休診・手術が決まるたび対象患者へ1人ずつ電話。不在/留守電/SMSを手で記録し、担当者名と日付を毎回追記
SMS一斉送信+自動再送に切替え、つながらない人だけ電話に絞る。既存のSMS送信ツールを横展開するのみ ★★★ ★★
2 リハ・予約リマインドSMS
毎日、担当者が手動で対象を選び一斉送信
予約前日に自動送信(定時バッチ)。毎日の手作業そのものが消える ★★★ ★★
3 検査データの取込み
電子カルテで毎回同じ固定手順の取込み→スプレッドシートで取込み済みを照合
PC操作の自動化(RPA/スケジュール実行)の典型。人が触らず無人で実行可能 ★★ ★★
4 手術表の印刷→各所差し替え
更新のたび印刷し複数の部署へ貼替。差し替え漏れが手術日連絡漏れ(インシデント)に直結
各所にモニター掲示(同じ1画面を見る)。印刷・差し替え・貼り間違いが丸ごと消える ★★ ★★
5 書類発行の算定
40種超の書類で金額・レセ略称・算定方法がバラバラ。新人が都度シートを探し、算定間違いが失敗チェックにも頻出
書類名を選ぶと金額・略称・手順・注意が1画面表示(P1「書類ナレッジ」と連動)。算定ミスを予防 ★★ ★★
6 消耗品・備品・弁当の発注
在庫が減ったら気づいた人が記入。弁当は手術日に手配
発注点(最低在庫)を決めて定期発注リスト化。弁当は手術がある日だけ自動リマインド ★★ ★★
7 受付・会計の確認漏れ
失敗チェックリストの大半が確認・記録漏れ(取り違え、登録ミス、預かり記録忘れ等)。事後に反省を記録
事後ではなく作業の途中で止める。会計時の必須確認項目をチェックを付けないと次へ進めない運用に ★★ ★★
8 初診予約フォーム→電話
フォームを確認し患者へ折り返し電話して予約
フォームで折り返し時間帯を選択+自動一次SMS。電話の往復回数を削減 ★★ ★★
9 麻酔依頼の様式化
手術予定から年齢・性別・術式・病名・所要時間を手で転記し麻酔科へ依頼
手術予定を入れると麻酔科向け依頼書を自動整形。二重入力をなくす ★★ ★★
最も効くのは「電話業務」と「毎日のSMS・取込み・印刷差し替え」。ここは“人がやらなくていい作業”がはっきりしています。また失敗チェックリスト約1,000件は宝の山で、「どんなミスが起きるか」が分かっているため、起きてから直す → 起きないように作業を止めるへ変えるだけで質が上がります。

6. データ分割・移行方針

現状の135シートは 機能単位の6〜7データセット に再編します(ファイル単位ではなく機能単位で分割)。

データセット含める内容
① 業務タスク管理日次/定期/申し送り/曜日別/個人別 を統合
② 予約・外来管理予約変更/予約管理/休診/担当医表
③ 手術・患者対応手術予定/術前コンサル/麻酔/PCR/送迎
④ 発注・在庫発注/在庫マスタ/倉庫
⑤ 教育・評価・インシデントスキルチェック/失敗/指摘
⑥ 参照マスタ内線/端末/接続情報/書類ナレッジ/重要事項
⑦【隔離】認証情報・患者マスタ各種認証情報、患者マスタ(数万件規模)
移行時の整理ルール:(1) 無名・放置シートや旧バージョンは内容確認のうえアーカイブ。(2) 数万行の過去ログは「アーカイブ」として本番から分離。(3) 重複シートは最新1本に統合。

7. セキュリティ上の重要対応

要対応:現状、各種の認証情報(接続情報を含む)と患者個人情報が、業務管理ファイル内に他の業務データと混在しています。アクセス権の制御が効きにくく、情報管理上のリスクとなります。

8. 推奨プラットフォームと進め方

プラットフォーム候補

スプレッドシートのURLやフォーム回答シートが多数あり、クラウド型グループウェア中心の運用とお見受けします。以下が候補です(最終決定は要相談)。

候補向いている点留意点
Google AppSheet既存スプレッドシートをそのままDB化。スマホ対応・通知が容易複雑な画面はやや不得手
kintone業務アプリを部品で量産。権限・プロセス管理が強い月額コスト
自作Webアプリ本設計書と同系統のデザインで自由に構築開発・保守の工数

推奨ステップ

  1. 第0段階:認証情報・患者データの分離(セキュリティ)+ シート棚卸し(不要シートの選別)。
  2. 並行(最速の成果):第5章の自動化・省力化のうち難易度の低いもの(予約変更のSMS化/リマインドSMSの定時自動送信/手術表のモニター掲示)を先行実施。アプリ開発を待たずに毎日の手作業を削減できます。
  3. 第1段階(P1):予約変更/発注・在庫/インシデント/書類ナレッジ から、効果が見えやすい1本を試作(PoC)。
  4. 第2段階(P2):中核の「業務タスク管理」を構築し、個人別・曜日別シートを置き換え。
  5. 第3段階(P3〜P4):参照Wiki、教育評価、レセプト管理を順次展開。
次のアクションとして、P1のうちどれを最初の試作対象にするかを決めていただければ、そのアプリの画面イメージ・データ設計の詳細版を作成します。

9. 付録:業務内容のタイプ別内訳と割合

実際にExcelに記録された業務を12のタイプに分類し、件数(行)ベースで割合を出しました。各タイプの代表的な業務を、個人情報を含まない中立な要約で示します。

集計方法と対象:現クリニックの事務運用シート(日次業務リスト/予約変更・予約管理/発注/失敗チェック/指摘/書類メモ/手術・麻酔・術前/電子カルテ修正/画像診断/忘れ物 等)の業務行 計12,703件を集計。
除外:過年度(2015〜2020年)の旧総務ログ、個人別タスク・スキル表(重複計上回避)、患者マスタ・認証情報等の参照データ。
・分類はキーワードによる自動分類のため概算です(件数の多い日次ログの内訳に左右されます)。「その他・連絡事項」は開閉店・施錠・電源など定型の連絡が中心。
渉外・人事・経理は主に総務部門の管轄のため、現事務スコープではほぼ0件です。
・本公開版では、原文に個人情報・第三者情報が含まれるため原文は掲載せず、中立な要約のみとしています。
タイプ件数割合比率
手術・術前系3,80429.9%
予約・外来調整系1,86614.7%
カルテ・データ処理系1,65313.0%
設備・庶務・環境系1,50911.9%
インシデント・品質管理系1,2499.8%
その他・連絡事項1,0588.3%
受付・会計系7646.0%
発注・在庫・備品系6705.3%
書類・証明系1281.0%
渉外・広報系/人事・労務系/経理・行政系≒00.0%

※渉外・人事・経理は主に総務部門の管轄のため、現事務スコープではほぼ0件(除外集計)。

手術・術前系 3,804件 / 29.9%

予約・外来調整系 1,866件 / 14.7%

カルテ・データ処理系 1,653件 / 13.0%

設備・庶務・環境系 1,509件 / 11.9%

インシデント・品質管理系 1,249件 / 9.8%

受付・会計系 764件 / 6.0%

発注・在庫・備品系 670件 / 5.3%

書類・証明系 128件 / 1.0%

その他・連絡事項 1,058件 / 8.3%


10. 付録:電話問い合わせ記録の分析(タイプ分け)

事務が受けた電話問い合わせの記録シート(計142件/2023年8月〜2026年6月)を分析しました。事務が電話を受け、看護師・医師に確認して薬局や患者へ回答するまでの記録です。本公開版では、個人情報を含まないため集計と中立な要約のみを掲載します。

問い合わせ者の内訳

問い合わせ者件数割合比率
薬局・薬剤師10271.8%
患者本人・ご家族3625.4%
その他42.8%

内容のタイプ別内訳

タイプ件数割合比率
〔処方関連〕 在庫切れ→代替・剤形変更6646.5%
〔処方関連〕 重複投薬・併用禁忌・他院調整149.9%
〔処方関連〕 用量・用法・日数の確認/訂正117.7%
〔処方関連〕 処方箋の期限延長・再発行53.5%
副作用・体調の相談1510.6%
受診・予約の相談107.0%
服薬の中止・継続の相談64.2%
検査データ・画像の提供依頼32.1%
紹介状の作成・宛名変更32.1%
その他96.3%

※「処方関連」の4タイプ合計=96件・67.6%。分類はキーワードによる概算。患者個人情報は掲載していません。

代表的な問い合わせの種類(中立な要約)

分かったこと:
約7割が薬局からの処方に関する問い合わせ(疑義照会)。中でも最多は「在庫切れによる代替・剤形変更」(46.5%)で、同種の確認が繰り返し発生しています。
ほぼ全件、事務は医療判断ができないため「→ 看護師・医師に確認 → 薬局・患者へ回答」という取り次ぎの往復が発生しています。
・患者本人・家族(25%)からは、副作用・服薬の可否・受診の相談が中心です。
自動化・簡易化の提案:
「在庫切れ時の代替ルール」を医師と事前合意してテンプレ化(例:口腔内崩壊錠が無い場合は同一規格の普通錠へ変更可/規格違いの換算可 等の包括指示)。よくある疑義照会の確認の往復そのものを減らせます
・電話メモを構造化フォーム化(日付・問い合わせ種別プルダウン・確認者・結果)。検索・月次集計・伝言漏れ防止につながり、第5章の自動化・第9章の集計と連動できます。
・頻出パターン(剤形変更・用法)はFAQ化して薬局へ共有し、問い合わせ自体を減らします。